令和2年度 親子プログラミングキャンプ in 姫島 報告記事

日時:2021年3月13日(土)13:00〜16:00
講師:ハイパーネットワーク社会研究所
    ビジュアルプログラミング言語viscuitファシリテータ 竹林 美伽
    臼杵市立福良ヶ丘小学校 教諭 竹林芳法

3月13日、姫島親子プログラミングキャンプが開催されました。
これは、姫島ITアイランド構想を打ち出す姫島が、次世代を担う子どもたちへの教育事業の一環として行っているイベント。姫島村の子どもたちをはじめ、村外からの参加者を募り、ITアイランドとしての姫島を知ってもらう取り組みです。

前回は、姫島に子どもたちを招き、自然豊かな姫島で2泊3日の日程で開催されました。2回目となる今回は、新型コロナウイルスの影響もあり、初のオンライン開催となりました。

遠隔での開催となった姫島親子プログラミングキャンプの様子を、以下で詳しく紹介します。

1250 オンライン上で集合

今回はオンライン開催ということもあり、開始10分前にオンライン接続の確認を行いました。オンラインでの開催では、参加者は2台の端末を使います。

まず、正面のタブレットやパソコンを通してZoomを使ってコミュニケーションをとります。そして、もう一台のダブレットで、それぞれがプログラミングを行っていきます。

今回のオンライン形式に合わせ、タブレットがない家庭には端末の貸し出しを行いました。また、Zoomやネットワーク接続の利用方法のレクチャーを事前に行い、準備万端での開催となります。

1300 オリエンテーション開始

全員が集合し、接続確認が終わりました。いよいよ姫島親子プログラミングキャンプのはじまりです。

まず、進行役のハイパーネットワーク社会研究所の渡辺さんから、参加者の紹介と、今回の姫島親子プログラミングキャンプの目標について話しがありました。

「今回は、姫島村のほか、日出町(ひじまち)や中津市、大分市の小学生12名が参加しています。
そして、今日は3つの目標があります。

まずは姫島村がどんなところかを知ること。
絵を描いてプロフラミングを楽しむこと。
最後に、みんなの作品を見て交流することです。

今日初めて会うお友達とも交流してみましょう。」

1310 姫島村の紹介

まずは、姫島村がどんなところなのか、姫島村役場水産観光商工課の桜井さんが、姫島村の紹介をしてくれました。

「姫島村は大分県唯一の『村』で、人口約2,000人、スーパーはあるけどコンビニはありません。信号がひとつありますが、これは子どもたちの学習のためなんですよ。」

姫島の環境の説明のあとは、姫島の文化や歴史について学びます。

姫島では、国の無形民俗文化財 に選択されている「姫島盆踊り」が有名で、なかでも、白塗りの子どもたちが踊る「キツネ踊り」が知られています。
そして、姫島の伝説である「姫島七不思議」が紹介されると、子どもたちは興味津々です。

「姫島の七不思議とは、姫島という名前の由来にもなった、姫のお話が関係している言い伝えです。日本書紀にも記載があり、ひとりの姫様が島に上陸して神様になったことが姫島のはじまりといわれています。」

そのほかにも、「アサキマダラ」という蝶が姫島村で繁殖していること。
そして、タコやカレイ、タイが採れるため水産業がさかんなこと。
なかでも、姫島車えびが有名で、子どもたちに人気のエビフライをはじめ、さまざまな味わい方があることを紹介してくれました。

姫島小学校の紹介

姫島の説明のあとは、姫島小学校の内林校長先生が、姫島で暮らす子どもたちや、小学校の様子について詳しく紹介してくれました。

人口約2,000人の姫島村では、小学校と中学校が1校ずつあります。小学校は61名、中学校では30名の生徒が学んでいます。

「全校生徒がみんなの名前と顔を覚えているんですよ。休み時間になると、学年は関係なく、みんなで遊んでいます」

と内林校長先生。

そして、姫島小学校では、4年生以上になると運動会で「鼓笛(こてき)」を演奏する伝統があることがわかりました。

6年生が中心となり下の学年に演奏方法を教えることで、代々引き継がれてきました。最初は誰もが初めてですが、練習を重ね、運動会ではみんな立派に演奏できるようになります。

また、姫島にはITアイランドならではの授業風景もあるようです。
それは、iPadといったタブレット端末を活用した授業です。IT技術とネットワークを使い、学校にいながらミュージアムの見学を行ったケースを例にとり、内林校長先生が説明してくれます。

「6年生が『アバター』を使い、別府の太陽ミュージアムを見学しました。アバターとは、自分の分身という意味。アバターを通してミュージアムの様子を姫島小学校の画面に映すことで、ミュージアムに行かなくても見学ができました。児童はコントローラーでアバターを操作し、自分の目線で見学ができるんです。」

児童たちは、画面越しに姫島小学校での学習の様子を興味深そうに見ています。

「今日の姫島親子プログラミングキャンプには、姫島小学校からは4年生と6年生の4名が参加しています。今日のプログラミングキャンプをきっかけに、いつか姫島に遊びに来てくださいね。」

と内林校長先生。

その後、姫島の特徴がよくわかる紹介動画が流れました。姫島の七不思議の場所や盆踊りの様子など、自然豊かな姫島の魅力が伝わってきます。

本来であれば姫島村で過ごす計画でしたが、それができなかった今回。子どもたちは、画面越しに姫島村の様子を知ることができたようです。

1320 みんなで夢の島をつくってみよう!(1

●動かし方を覚える

姫島村について学んだあとは、いよいよプログラミングを学んでいきます。

今回のプログラミングキャンプでは、プログラミングを構築する際に必要となる「プログラミング言語」の仕組みを、実際に手を動かしながらゲーム感覚で学ぶことができる「viscuit(ビスケット)」を教材として使います。

今日の講師は、ビスケットのファシリテータ竹林 美伽先生。そして、臼杵市立福良ヶ丘小学校の竹林 芳法先生です。
前半でビスケットの基本的な操作を覚え、後半で実践をしていきます。

「まずは基本操作を行いますが、基本操作を覚えたあとは、できるだけ実践の時間をとりたいと思います。みなさんよろしくお願いします。」

と竹林先生。
キャンプの最終的な目標は、それぞれが絵を描き、その絵をアニメーションのように動かすことです。まずは、絵の動かし方からスタート。

Zoomの画面には、先生の画面、そして、ビスケットを操作するタブレット端末が映し出されています。
先生の説明を聞きながら、映し出されたタブレット端末の画面を見て、子どもたちは手元のタブレットを操作していきます。

まずは、先生のお手本です。
タブレットの右端にある赤い三角形をタブレットの左の画面に移動します。

左は、どんな絵をどのくらいの数使うかを指示する画面です。
先生は、赤い三角形を3つ、左画面に置きました。

次は、その絵を動かす指示を出します。
絵の動きについては、右側の画面を使ってプログラミングをしていきます。

先ほど、移動した右端の三角形の上に、メガネのようなマークがあります。
これを使って、右画面で絵の動きの指示をしていきます。

「まずは右画面メガネを置きます。そして、置いたメガネの左のレンズに動かしたい絵を入れます。そして、右のレンズにも、三角形を置いてみてください。」

画面を見ていた子どもたちが、手元にあるタブレットを使って、指示通りに三角形とメガネを置いていきます。

「できた人から、画面越しにタブレットを見せてください。」

すると、左の画面の三角形が、アニメーションのように動きはじめました。
ただ、同じように置いたのに、みんなのタブレットを見ると、それぞれ動きが違うのがわかります。
上から下に動いている子もいれば、右から左に動いている子もいるようです。

なぜでしょうか? 子どもたちも不思議そうな表情をしています。

「では、次はお魚を動かしてみましょう! お魚らしい動きをさせたいと思います。どうしたら良いと思う?」

竹林先生の問いかけに、みんなすぐにタブレットに向かいます。
驚くべきことに、説明しなくても子どもたちはどうすれば良いか、わかっていたこと!

大人がプログラミングと聞くと、仕組みをまず頭で理解しようとしますが、子どもたちは、感覚でメガネの仕組みに気付いたのかもしれません。

「すごい! そうです。左のレンズに置いた魚を動かすには、右のレンズにどうやって魚を置くかが大切なんですね。前に動かすには、2匹目の魚を1匹目の魚より少し前に出します。そして、速さを変えたい場合、もう少し前に出してみてください。」

感覚で理解していた子どもたちですが、先生の説明で「どうすれば望んだ動きが生まれるのか」という仕組みがわかったようです。

一度わかると、子どもたちはどんどん応用していきます。

次はオバケ、そして、表情が違う顔の2つのイラストを使って、アニメーションのように流していきます。

「メガネを使うと、動きと速さを変えることができます。
そして、顔のイラストのように、ひとつの絵がいろんな動きをする場合もありますよね。
つまり、動きは上下左右だけじゃない場合もある。ということは、メガネの命令がひとつじゃないということ。メガネをいくつか使えば、様々な動かし方を命令できるんです。」

先生が少し説明しただけ。しかし、子どもたちはどんどん「動かしたい」という考えを、ビスケットを使ってプログラミングしていきます。

みんな、飲み込みが早い! そして、動かすのが上手い!

「メガネを組み合わせると、いろんな動き方ができるのがわかりましたね」

と竹林先生。

動かし方の基本を終えた後は、5分間の休憩をはさみます。

●絵を描いて動かしてみる

次は、ビスケットに入っているイラストではなく、自分たちで描いた絵を動かしていきます。
鉛筆マークをクリックして出たカラーパレットを使い、好きな絵を描きます。

「今回のテーマは姫島祭りなので、『祭り』にまつわる絵を描きましょう。姫島村に関することじゃなくても良いので、楽しい絵を描いて、メガネで命令して動かしたものをどんどん先生に送ってください!」

先生から絵の描き方を教えてもらった子どもたちは、一生懸命に絵を描きはじめました。
ここでは、子どもたちから送られてきた絵を集めて、すべてを合体させます。一体、どんな絵が集まるのでしょうか。

保護者の方が応援するなか、2度・3度と、違う絵を描いて送ってくれた子もいるようです。
そして、竹林先生のところに送られてきた「動く絵」、すべてを合体させてみると……

すごく賑やかなアニメーションが完成しました!
Zoomの画面越しに、子どもたちのうれしそうな顔が映っています。

「みんなで作った、とっても賑やかなお祭りですね! みんなありがとう!」

と先生。
次はいよいよ、実践です。

14:10 姫島名物のおやつを食べよう!

後半の実践に入る前に、姫島名物のおやつを食べながら休憩をはさみます。

今回はオンライン形式のため、事前に姫島名物のおやつを参加者のおうちに送ることとなりました。

おやつと合わせて送られたのが、「キツネのお面」。キツネ踊りのメイクが描いてあります。子どもたちは、早速お面をつけて楽しそう。みんな似合っています。

さて、今回送られたおやつは「車えびのかりんとう」「こぎつねキャンディ」、そして「ミレーのビスケット」

「本当は生の車海老を送りたかったんだけど!」

と渡辺さん。車海老が練りこまれたかりんとうを食べながら、

「車海老の味するよ!」

と子どもたち。

ミレーのビスケットは高知県で有名なおやつですが、今回の教材「ビスケット」とかけてチョイスされたようです。

おやつを食べながら、自己紹介もしました。
名前と「好きなもの」を話していく子どもたち。寝ることが好きだったり、バレーボールやサッカーだったり。なかには「プログラミングが好き」という子も!

和気あいあいとした雰囲気でリフレッシュ。姫島のおやつを食べながら、今回参加した友達のことを知ることができましたね。

1450 みんなで夢の島をつくってみよう!(2

いよいよ実践です!

これまで学んだ内容を基礎に、自分の作品を仕上げて発表します。
ここで、講師は竹林先生にバトンタッチ。

「みなさん、ビスケットで色々動かせるようになりましたね。次は、自分のいた絵でゲームを作ってみたいとおもいませんか?」

画面越しに、「うんうん!」とうなずく子どもたち。

「それでは、オリジナルゲームの作り方を紹介します! まずは、私と同じようにつくって、あとで好きなように改造しましょう」と竹林先生。

ゲームは、障害物を破壊していくシューティングゲームのようです。

「必要なのは、障害物と壊す玉、そして、玉が出てくる発射台と爆発の4つです。」

まずは自分で描き、それに動きをつけていきます。前半で「動き」についてマスターした子どもたちにしてみれば、お手の物。ひとつのイラストに様々な動きを組みわせるツワモノもいました。

ゲームの作り方を覚えた後は、絵も動きもオリジナルのゲームを作ります。
作成時間は、たっぷり30分。みんなどんなゲームを作るのでしょうか。
作成中は、わからないところを先生に質問する子もいました。みんな、自分の作品をつくるのに集中しています。

そしていよいよ発表の時間!

先生の元に送られた作品を、ひとつずつ見ていきます。
すると……驚きの作品が続々と登場し、先生や保護者の方もびっくり!

障害物や玉の大きさ、数を変え、ゲームとしてのエンターテイメント性高めたもの。
障害物をキャラクターにして、玉が当たったら「爆発」ではなく、キャラクターの好物の「バナナ」がでるもの。
障害物の色を変え、色ごとに「爆発」が変わるもの。

なかには、バリア機能をつけたり、新たにボタンを追加したりして、玉の種類を変えられるようにした子もいました。

大人も追いつけない速さで、「基本」を自分なりに「応用」し、形にしていく子どもたち。
驚くべき集中力と柔軟性です。

発表中は、友達の作った作品をじっくりと見て、自分にはない発想に驚いたり、次の作品のヒントをもらえた子もいたようです。

そして、発表が終わっても、タブレットに向かって作品づくりに熱中している様子も印象的でした。

16:00 終わりのことば、写真撮影

「3時間という長い時間でしたが、みんなすごい集中力でとても楽しんでいるように見えました。ビスケットでは、メガネをたくさん使えば、もっといろんな動きができるとわかったのではないかな? と思います。」と渡辺さん。

「何をどんなふうにしたいか。これが大事です。色々考えて、どんどん楽しい作品を作ってくださいね。ビスケットを使って、プログラミングをしていってください。」

最後は、画面越しに記念撮影。
満足そうな子どもたちの笑顔が印象的でした。

<感想>

今回、オンラインでの開催となった姫島親子プログラミングキャンプ。参加した親子から寄せられた感想の一部をアンケートよりご紹介します。

【子どもたち】

●今日のプログラミングキャンプは楽しかったですか?

楽しかった!(全員)

●どんなところが楽しかったですか?

  • ゲームを作る
  • いろんなことが体験できたこと
  • プログラム学習が楽しい
  • ゲームを作ったところ
  • 自分でゲームを作ること
  • プログラミングが初めてで難しかったけど自分の思う通りにできた楽しかった。
  • 自分で、ゲームやものの動きをタブレットで、表したりしたところ。

●今日の感想

  • 楽しかった。
  • とても楽しかったです。みんなが作ったゲームが見れたこともよかったです。
  • 友達の作品のすごかったところ見て真似をして参考にしながら、いい作品を作りたいです。
  • とても楽しかったので、また参加したいです。
  • 初めてだったけど、楽しかった。

●姫島に行ってみたいと思いますか?

行ってみたいと思う!(全員)

●その理由を教えてください。

  • お菓子がおいしかった
  • 前行ったときがたのしかったから
  • 楽しそうだから
  • 海も綺麗だし、景色もキレイで、七不思議も面白いから。
  • 今日、美味しそうな料理など楽しそうなことがいっぱい知れたので行ってみたいと思いました。
  • 姫島村はすごく良い所だからです。

【保護者】

  • 子供も私もプログラミングに興味がわきました! 楽しかったです。
  • 1年生でできるか不安でしたが、とてもわかりやすく教えて頂いたため全く問題なかったです。本人はとても楽しかったそうです。ありがとうございました!
  • ビスケットの使い方が詳しくわかりました。また子どもが初めてリモート体験して、良い機会になったと思います。たのしそうにとりくんでいたので、またこのような機会があったら参加したいです。ありがとうございました。
  • 全般的に良かったが、時間超過が….。次の予定を変更せざるを得なかった。
  • 実際に姫島に行きたかった感もありますが、オンラインも面白かったです。楽しい時間ありがとうございました!
  • ものすごくたのしかった勉強になりました
  • 少し長いかなと思ったが、子供が理解するにはちょうどよい時間でした。充実した時間を与えてくださり、ありがとうございました。
  • 今回初めて参加して子供も凄く楽しそうにしていて参加してよかったです
  • 初めてのプログラミングで今日は簡単な動きしかできなかったが、他の方の複雑な動きのゲームを見て感心しました。子供も興味を持って楽しんでいて、あっとゆう間の3時間でした。ありがとうございました。
  • zoomでもわかりやすい操作説明で、良く理解できました。次回、姫島で開催することあれば、ぜひ姫島に上陸して参加したいと思います!

プログラミングは、2020年から小学校で必修となりました。そうした経緯もあり、プログラミングがどういうものか、子どもたちの関心もより高かったのではないでしょうか。

また、必修化にあたり「プログラミングがどのようなものかわからない」といった不安を抱える保護者の方も少なくないと思います。

今回の姫島親子プログラミングキャンプは、親子参加型。親子で楽しみながらプログラミングを学ぶことで、プログラミングの仕組みや内容を知るきっかけになったと思います。
オンラインでの開催でしたが、姫島村外から参加した子どもたちからは「姫島村に行ってみたい」という声が聞かれました。

来年は、みんなで会ってプログラミングを学びたいですね!

そして、3時間という長い講座でしたが、子どもたちは集中して、よくがんばりました!
キャンプをきっかけに、プログラミングに興味を持って、楽しく学んでいってくれるとうれしいです。

子どもたち、そして保護者の皆さま、お疲れさまでした!