人口たったの2000人の島で、最先端教育のプログラミングキャンプをする理由とは!?

1. はじめに

大分県の自治体で、唯一の島。

クルマエビの養殖、幻の2日ひじき、七不思議の伝説、黒曜石産地、キツネ踊り―――
島独特の文化が根付き、県民でさえ多くは知らず、不思議の絶えない「大分県姫島村」。

しかし今、その村が「ITアイランド」(ITの島)に変貌しようとしているんです…!

2020年2月8日。
50名以上の小学生が姫島村に集結し、「最先端のプログラミング教育」を受けていました。
ITやプログラミング、ましてや”最先端とは程遠い環境”のはずなのに…。
ITアイランドとは?姫島とは?なぜ姫島でプログラミング教育?どんなことやってたの?

2日間に渡る、「親子プログラミングキャンプin姫島」の様子をレポートします!
でもそもそも、姫島のことを知らない方はコチラの記事もご覧になってください!
この記事をチェック!→そもそも、姫島ってどこ?どんなところ?10枚の写真でお伝えします!

2. 姫島でプログラミングキャンプ・・・なぜ?

結果からお伝えすると、姫島での親子プログラミングキャンプは大成功でした!
みてくださいこの笑顔と作品!

しかし、ここで疑問が1つあると思います。
なぜ、姫島でプログラミング?

・・・その答えは、「姫島ITアイランド構想」にあります。

世界では第4次産業革命の時代と言われ、大分県も”OITA 4.0”として取り組みを進行中。

  1. 人口減少に伴う地域課題を、ITで解決すること
  2. 地場企業だけではなく、県外から企業や人材を誘致すること
  3. IT人材の育成

の3つを取り組みとして挙げていて、姫島村と大分県が連携して、そのモデル作りを進めているんです。知っていましたか?
しかし姫島では、1990年から2018年にかけて、1300人もの人口が減少。主産業である水産業も低迷する最中、登場する計画が「姫島ITアイランド構想」です。

上記の1〜3に対応して、企業が入居できるサテライトオフィスやコワーキングスペースを設け、光高速通信回線の整備。フェリー待合所にWI-Fiスポットを設置したり、小・中学生向けのプログラミングキャンプを行ったりしているんです。(ここでようやく出てきました。笑)

「姫島ITアイランド構想」と言う、実験的かつ先端的な取り組みが実は、姫島で進んでいます。
実際に、東京のIT企業2社が、姫島にオフィスを構えているんです!(株式会社ブレーンネット、株式会社Ruby開発の2社)
今回の「親子プログラミングキャンプin姫島」も、その取り組みの一つです。

今回のキャンプは、大々的な宣伝をしていないにも関わらず、即満席だったそう。
2020年度から小学生のプログラミングが必修になるため、関心の高い保護者の方々や子供達が参加してくれたようです。
姫島が、いかに注目されているかわかりますね!

さて、リポートしていきます!(今度こそです、今度こそ。)

3. 「親子プログラミングキャンプin姫島」の様子をリポート!〜1日目〜

2月8日~9日で行われたキャンプの様子を、時系列でお送りします!

2/8(土)12:30
<集合時間>

村外の小学生たちが集合してきました。みんな、緊張&ワクワクですね。

参加者は50名ほど!島内外の子供達が5:5で混在しています。

2/8(土)13:00
<オリエンテーション開始>

オリエンテーションが始まりました!
まずは、藤本昭夫(ふじもと・あきお)姫島村長からの挨拶。

「これから、IT・AIの社会になると言っても、結局は人間が人工知能にプログラムを教えることとなります。是非皆さんにはこの機会を通して学んで欲しい。」

そして、ハイパーネットワーク社会研究所の渡辺律子(わたなべ・りつこ)副所長より。

今回のプログラムの主旨や目標などを共有。未来の社会とは?プログラミングとは?
「プログラミングを学ぶことが”目的”なのではなく、みんなの未来を創造していく上で、プログラミングが役に立つんです。」

そして、姫島小学校の佐藤健(さとう・けん)校長より、アイスブレイキング。
(アイスブレイキングとは、初対面の人が出会うとき、緊張をほぐす方法。)

様々なゲームを通して、話しやすい雰囲気作りをするだけでなく、2日間の目的を達成するために、チームや全体におけるコミュニケーションを図ります。

それにしても楽しそう・・・!(入りたかった・・・)

2/8(土)14:00
<プログラミング講座1>〜アーテックロボの基本的な使い方〜

ハイパーネットワーク社会研究所の吉良さんより、今回の教材である「アーテックロボ」の基本的な使い方講座。
子供たちも箱を開けてワクワク。
これで、どんなことができるんだろう?

アーテックロボとは・・・
アーテックブロック+ロボットパーツ+プログラミングを組み合わせて遊びながら学ぶ、
「ロボットプログラミングキット」です。
LEGOにモーターがついていて、指示を与えたらその通りに動く、と言ったら少しイメージできるでしょうか。

まずは、設定された課題をやってみよう!
と言うことで、いきなり「信号機を作れ」とのこと・・・。
え、そんなことできるの?

子供たち、さすがです。5分も経たずに形に。
ブロックとロボットパーツを組み合わせた後は、iPad上のプログラムと連携。
青が3回点滅した後、赤に変わるというプログラムを完成させました。

子供たちの眼差しは、真剣そのもの。
しっかり丁寧に1つ1つ理解しながら進める子もいれば、課題が出来たらどんどん自分のオリジナルブロックを組み立てる子も。それぞれの個性が出るところが面白い!
子供たちの創造力の豊かさを、思い知らされます。

2/8(土)15:30
<プログラミング講座2>〜未来のITアイランドを作ってみよう〜

さて、基礎を学んだら次は応用!
ブロックの組み立て方や、ロボットの使い方、プログラムの組み方がわかってからが勝負。

「どんな乗り物があったら面白いか?」
「こんな乗り物なら、こんなことを解決できるんじゃないか?」
「そもそも、乗り物じゃなくて良いんじゃないか?」

ハイパーネットワーク社会研究所、姫島にあるIT企業の方々(ブレーンネット、Ruby開発)、県内大学生(日本文理大学、APU)、県内高校生(双国高校)など、様々なスタッフが子供たちの創造力と向き合いながら、どんどんと形にしていきます。

ロボットの下部にある赤外線センサーが黒い線を認識し、勝手に曲がる仕組みに。
すごい・・・

こちらは、ジャイロセンサーを使って、iPadを傾けた向きにロボットが曲がる仕組み。
会場からは、「おおおお〜〜〜〜」というどよめき。
「こんなことできるんじゃないか?」と思いついてから形にする速さは、大人をも凌駕します。これには、アーテックの講師・吉良さんもびっくり。

こちらは何やら、鍵盤を使っていますね。
どうやら、ロボットから音を出す仕組みを作っているよう。気になる・・・。
発表は次の日なので、今日はここまで。


2/8(土)18:00
<夕食&交流会>〜きつね踊りを体験!〜

夕食を済ませた後は、交流会およびきつね踊りを体験!
ここからは主に写真でお伝えします。

そもそも姫島のきつね踊りは、鎌倉の念仏踊りが発展したものと言われ、昭和20年代に大人から子供の踊りになったとのこと。
ちなみに姫島の盆踊りでは、1日に40~50種類以上の踊りが踊られるとか。
日本中の地域であらゆる伝統や文化が失われつつある中で、姫島村の文化継承をしていく姿には、心を掴まれました。

こちらは、村外の有志の小学生による、きつね化粧。

順に追っていくと、段々サマになっていく・・・!
そして最終的には・・・

なんか・・・可愛いし、かっこいい!!!(笑)
しかも、男らしくなっている・・・。

大学生や高校生たちも!
みんな似合っています。(笑)

見よう見まねで踊ってみます!
みんな、プログラミングの時と同じくらい、いや、それ以上に真剣!?

未来に役立つIT技術や思考力を養うことは重要。
しかし、普段出会うことのない伝統文化に触れることも同じように重要。
IT技術が未来で、伝統文化が過去ということではなく、確実に今、どちらも重要なものとしてこの現代に存在しているんだな、と感じました。
これを学べたのは、姫島だからこそ。

今日はもう20時を過ぎたので、これにて解散。
これで、1日目は終了!

4. 「親子プログラミングキャンプin姫島」の様子をリポート!〜2日目〜

さて、2日目がスタート!

2/9(日)9:30
<プログラミング講座3>〜発表会に向けて作品仕上げ〜

さあここから各自、仕上げていきます!

Plan—– 自分の作りたいロボットを考えてみる。
Do——- それを、作ってみる。プログラミングしてみる。
Check— イメージ通りに動くかどうか、確認する。
Action— OKなら次のイメージへ。ダメなら何がダメだったか考えて、改善する。

こうしてPDCA(Plan→Do→Check→Action)を繰り返すことで、「プログラミング思考」を養う。

その結果、十人十色の作品が出来上がったようです。
みんな、どんな作品を作ったんでしょうか?
この後は発表会です!

2/9(日)11:00
<作品発表会>

さあ、発表会が始まりました!
2日間、大人たちやチームメートの力を借りながらも、自ら作り上げた作品の成果を発表します。
みんなの前だからドキドキ。
だけど、自信を持ってプレゼンします!

(とは言っても、みんなが自分一人を見てるって緊張しますよね・・・)

こちらは、「自動ドア」。
ドアが開いたら、青いランプが点きます。
もはや、世の中で役立っている機械を設計しちゃっています。

こちらは、フォークリフト。
定期的にフォークが持ち上がり、目の前に物があったら持ち上げます。
運転手のペンギンが、なんとも言えない可愛さ。(笑)

こちらもリフトのようなロボットですが、鉛筆専用!
特化型フォークリフトというのも面白いですね!鉛筆も持ち上がりました!

こちらは、ジャイロセンサーで傾いた通りに動くロボット!
みんな、興味津々の表情。

このロボットも面白いです!
これは玉入れロボットで、ゴールの前まで進んだら、バスケットゴールに入れるように持っているボールを放すんです。これも会場から歓声が。
そんな発想、どうやったらできるか教えて欲しい!

さて、最後はこちら。
今回のトリを務めたこの作品、ものすごく手が込んでいるんです。(動画で見せられないのが残念。。。)
こちらの作品は、見ての通り「クリスマス」をテーマにした作品なのですが、すごいのは見た目だけじゃありません。

なんと、クリスマスツリーが回転し続ける上に、「ジングルベル」が曲として流れるんです。
わざわざ、1つ1つ音階を打ったそう。すごい労力・・・。
何と言っても、これを作り上げる発想力がすごい上に、時間内にそれを作り上げる実現力がすごい。

何と言っても、全員が全員2日間諦めることなく、複雑なプログラミングを施した自分ならではのロボットを作り上げたこと。これが何よりもすごいことだと思います。

そして、姫島村の村内、村外の子どもたちが一堂に会して、プログラミングキャンプを通して交流したこと。それが子供たちにとって、何よりも財産になったと思います。

姫島村の子供たちは、村に1つしか小学校がないので、他の村の子供たちと交流することがなかなかありません。だからこそ、新しい発想を得たり、自らの創造力が育つ機会になりました。
また村外で県内から来た子供たちも、わざわざ車やフェリーで1時間~2時間以上かけて姫島に来て、プログラミングだけに集中できる環境で学ぶことが出来て、村内の子どもたちから刺激をもらいました。

今回、十人十色の作品が出来たのは、村内、村外の子どもたちが刺激し合ったからこそ。
つまり、プログラミングにだけ集中できる環境で、子どもたちが切磋琢磨しながら交流したことこそが、一番の価値だと思います。

ということで、大人たち顔負けのプログラミングキャンプは、これにて終了です!
お疲れ様でした!

5. さいごに

長い文章にお付き合いいただき、有難うございました!

2日間行われた「親子プログラミングキャンプin姫島」をリポートしましたが、簡潔に感想を3点にまとめて述べます。もう少しだけお付き合いください!

※あくまで個人の主観です!

  1. プログラミングキャンプが育てたのは、技術ではなく、”姿勢”だった。
    今回一番びっくりしたこと。それは、枠に捉われず取り組む子供たちの”姿勢”でした。大人になると常識に縛られ、何かしらの技術を身につければ身につけるほど、何をやるにつけても、「でも…」「それは難しい」「出来ない」などと口癖のように言います。その点子供たちは、基本的なことを教えれば、誰も作っていない物を、枠に捉われず、自ら考えて、諦めずに、自ら作ってしまう。この”姿勢づくり”にこそ価値があったキャンプだったと思います。
     
  2. プログラミング教育は目的ではなく、ただの”手段”だった。
    今回子供たちに学んだことが、もう1つあります。それは、「この技術を何に応用できるか」ではなく、「そもそも自分は何が作りたいか」という問いの方が重要だということです。プログラミングも、あくまで何かを解決するための手段。それを目的にすり替えてしまっては本末転倒です。子供たちが、「自分はこんなものを作りたい!どうやったら出来るんだろう?」と考え、周囲と力を合わせる姿を見て、あくまで「プログラミング」や「ロボット」は手段だと思いました。
     
  3. 姫島は、「伝統文化と最新技術の邂逅の場」だった。
    さいごに、姫島についてです。今回のキャンプは、姫島だからこそ出来たと思います。姫島は、伝統文化が今も継承されている村。その場所で、ITアイランド構想、つまり最新技術がこの島に入り込もうとしています。しかしそれは悲観するものではなく、姫島だからこそできること。伝統文化と最新技術が邂逅(かいこう・思いがけなく出会うこと)した姫島にこそ、日本の課題解決のヒントがたくさんあります。その可能性を参加者たちが大きく感じたことこそ、今回のキャンプの最大の収穫だったのではと思います。

このような機会があれば、また発信しますので、是非ご一読お願いいたします!

また、親子プログラミングキャンプのアンケート結果を以下に掲載しているので、是非ご覧になってください!